唯とリト 第三話夏祭り 前編
「バカ!結城、くんが……動、くから…ンッでしょ!?」
「へ~ホントに?オレもう動いてないのに?」
その言葉に唯の動きはピタリと止まり、顔がみるみる真っ赤に染まっていく
「も、もうっ!!どうしてあなたはそうやって私をからかうのよ!?⁄⁄⁄⁄⁄」
「悪い、悪かったって!だからそんな怒んなよ!」
頬っぺたを抓ってくる唯の手をなんとか押さえつけると、リトは聞かれないように小さな声で呟く
(やっぱ唯をいじめるのって楽しい……けどもっとこう…)
「なにぶつぶつ言ってるのよ?」
冷たい目で見つめてくる唯にリトは愛想笑いを浮かべる
朝、唯がリトの家に来てからかれこれ数時間
部屋に着くなりいきなり抱きつき唇を奪いにくるリトに最初こそ嫌悪感を滲ませていた唯だったが、
今は自分からリトを求めるまでに乱れていた
唯の変化は本能的なモノなのか、リトがそうさせているのか
リトは色々と頭の隅で考えていたが、今はただ目の前の体に意識を集中させる
「ア…ふぅ、ンッ…あァ…」
ぱんぱんと腰が打ち付け合う度に唯の秘所から蜜がこぼれてくる
リトの肉棒が膣内を掻き回し、溢れる蜜が白濁していく
ぐちゅぐちゅと卑猥な音をたてる結合部に羞恥心を煽られながらも、唯の動きは止むことはない
自分が今なにをして、どう感じているのか唯はみんなわかっていた
わかってはいるが止めることができない。止めようとも思わない
普段人目が気になったり、自分の性格が仇となって、中々リトに触れることのできない唯にとって
自分が定めた一週間に一度の日だけが、唯一素直になれる時だった
なによりリトに全身を愛されることの悦びが大きい
口には絶対に出さないが、今日だって色々期待して家に来たほどだ
リトのモノが自分の膣内をえぐる度、愛液を絡ませながら掻き回す度
唯の中で快感と共にリトへの思いが溢れ出す
結城くんは私だけの……誰にも誰にも――――
唯はリトの胸板に手を置きさらに身を屈め、奥へ奥へと肉棒を導いていく
「ゆ、唯!?……すげー気持ち、いい」
「うん!わた、私も…私も結城くんを……いっぱい感じる」
「唯……」
リトは唯の細い腰に手を伸ばすと勢いをつけて下から突き上げ始める
リトが腰を打ち付ける度に唯の中に電流の様な快感が流れていく
肉棒が膣内を擦り上げ、子宮口を激しく突きまわす
「アアっ…んッ!はァ…ぁ」
肉壁を抉るような強烈な出し入れに、快楽が波となって子宮へ全身へと押し寄せる
「ゆ、結城…くんっ、激し…すぎて私…」
「おかしくなる?いいよ…唯のイき顔オレに見せてくれよ。ちゃんと見ててやるからさ」
「だからどう…してそんなっ、ああッ…ンいじわるばかり……やッ」
リトは顔をにやけさせると、微妙に角度を変えて唯を責めたてる
「いつものお返し」
「もうッ、後で覚えて…アアぁ…んッ、ン!!」
今までとは違う波が体に現れると、それに唯は体を仰け反らせる
何度も交えているうちに、だんだんと唯の弱点がわかってきたリトは、そこを重点的に責めたてた
「…ゃあ、そこ、ダメぇ…」
「なにがダメ?」
リトはそう言うとそこに激しく打ち付ける
「ンッ、んん…結城くんっ…ホントにそこ…あァ」
唯の乱れようにますます興奮したリトの腰は、卑猥な音をたてながら何度も何度も唯を犯していく
上へ下へと体を弄ばれる唯の額から汗が滴り、リトの胸へと落ちる
「今のおまえすごいエロくてカワイイよ」
「バ…カ言わない、で!結城くんのせいで私っ…あァ…ん」
自分の全てに反応してくれる唯にリトはうれしくてしかたがなかった
笑みがこぼれ、顔をにやけさせていく
「あんッ…結城、くん…ハレンチは顔してる」
リトは汗に濡れる唯の白くてやわらかい乳房へと指を絡ませる
「ハレンチなのはおまえの方だろ?」
ムニュッとした肌触りが、上下左右にリトの手の中で形を変え弾む
「…ッん、やァ…ンン」
「おっぱい弄られながら突かれるのおまえ好きだなァ」
リトの言葉にムッとした顔になるも、胸への刺激と膣への快感が唯の理性を狂わせていく
「…ゃあ…そんな、こと言わない…でよ」
「なに言ってんだよ?こんなハレンチな風紀委員見たことねーよ!」
リトは胸を赤くなるまで強く揉み、膣へ少し乱暴に突き入れていく
すぐに気持ちよさの中に痛みが生まれ、唯の整った顔を苦痛に歪めていく
「あッ!痛い…結城、く…アアっ…ん゛あっ」
「なに?」
唯の気持ちは手に取るようにわかるが、リトは止めようとはしない
「…ちょっ、ちょっと待っ…待って!こんなの……あッ、くぅ」
そんな言葉とは裏腹に唯の締め付けが、これまで以上にギュッと強くなっている様子に、
リトの顔に笑みがこぼれる
それは日頃怒られてばかりいることへの仕返しなのか、リトはなんだか楽しそうだ
「や…やだっ、こんなコト…わた、私もっと…ンっ…ぁあ…」
「もっとなに?」
ろれつが回らないのかリトの言葉にも唯は、中々応えられない
「私…私こんなンっ…ぁは、んん…」
「……なに言ってんのかわかんねーよ」
リトは唯の腰を掴むと下から激しく打ち付ける
ぱんぱんと肉と肉がぶつかる度に唯の顔はますます苦痛に歪んでいく
けれども決してリトから逃げようとはせず、むしろ、腰の動きを合わせようとする唯
その姿は、快楽と苦痛二つの波に、だんだんと虜になってきているようで……
リトのモノを離そうとはしない締め付けや、硬くなっている乳首に、口から溢れる涎
感度の上がった唯の体はいつも以上のいやらしさをリトに見せる
「おまえってこんな風にいじめられるのが好きなんだ」
「そ、そんなワケないでしょっ!こ、これは……違うの」
けれども心も体もリトを求めて止まないことに唯自身も気づいていた
いつもの優しさとは違うただ欲望に身を任せたリト
牡の顔をして貪るように体を求めてくるリト
そして快楽と苦痛の中で、そんなリトを欲している自分
「ホントに?」
「……ッ!?」
リトの言葉に思わず言いよどんでしまう
「あはは、唯はカワイイなァ」
さすがにリトの態度に頭にきたのか唯の表情は厳しくなる
「もうっ!いい加減に……」
「そんなに怒るなって!それに……」
リトは動きの止まった唯の膣に肉棒を突き刺す
「ッあ!くぅ…うぅ…」
ガクガクと震える唯の腰を掴むと、リトは耳元でそっと囁く
「それに、オレにこんなことされるのホントは好きなんだろ?」
その言葉に耳まで真っ赤に染まる唯を、リトはにやにやと見つめる
「ホント、おまえってカワイイな」
「ち、違うの!ホントはこんな…私はただ…」
「違わねーよ」
リトの腰の動きがだんだんと早くなっていく
「んッ、あぁ…痛ッ…激しぃ…」
「けど…それがいいんだろ?」
リトの乱暴ともいえる突き上げに唯の軽い体は弄ばれる
「ん!ぁあ…すご、ダメぇ…やめ…やめて結城、くん」
「ふ~ん。嫌がってるわりにはさっきからオレのことギュウギュウ締め付けるおまえはなんなんだ?」
「しら…知らないわよそんなことっ」
唯は歯を喰いしばりながら、それでもリトから逃れようとはしない
そればかりか、ますますリトを求めるかの様に締め付けていく
「ゆ、結城…くん、私もう…あぅ、んッ…」
「なにイきそうなの?」
唯は首を振るだけで、返事をしようとはしなかった
そんな余裕などなくなっていた
苦痛が気持ちよさへと変わり、唯の体を支配していく
ガクガクと震える腰をそれでもリトの動き合わせようと必死に動かす
「じゃあイッてもいいよ。オレの前でやらしい唯を見せてくれよ」
唯は紅潮する頬を歪めながら、リトの上で腰を躍らせる
「おまえのイくところ全部見ててやるからさ」
リトのいじわるな言葉も唯にはもう聞こえてはいなかった
「あッ…ん、んん…ダメホントにもうッ…」
リトはたぷたぷと揺れる唯の胸の先端を指で摘む
「あっくッ…や、やめ…」
「なんで?おまえの体はオレのだろ?」
「そ、そうだ…けど、もっとやさしくしてッ…んッ」
膣内がキューッと蠢き、肉壁がざわざわと波打つ
リトの胸板に置いた手を支えに、唯の腰が激しく卑猥に打ち付けられる
「あ…くぅ…あぁ、んッん」
「もうムリっぽい?」
唯は首を縦に振ると、リトの顔を見つめる
熱を帯びた唯の視線にリトのモノも膣内でさらに大きさを増していく
「も…もう、ダメぇ私…私……あッくぅう、あぁあーーーッ!!」
体全体で大きく息をする唯は、リトのお腹の上で一人放心状態になる
「はぁ…はあ…は…ぁ…」
「おまえすげーよがってたな」
下でくすくす笑うリトを唯はムッとした表情で睨む
「だ、だってあなたがあんなに激しいことするから私は…。って全部結城くんのせいじゃないッ!」
いつもの調子で怒る唯にリトは笑みを深くさせると、いきなり上体を起こし、まだ脹れている唯に黙ってキスをする
「ちょ…ちょっとどういうつもりなの?⁄⁄⁄⁄」
いきなりのキスに口調こそまだ怒ってはいるが、その顔は、さっきまでと違いやわらかくなっている
そんな唯の顔を確かめるとリトはくすっと笑った
「それじゃあ、今度はオレの番。次はおまえがオレを気持ちよくしてくれよ」
「え!?あ…えっと……べ、別にそれはいいんだけど…。その……私どうしていいのかまだ…」
体をもじもじさせて、困惑している唯にリトは笑いかける
「心配しなくても全部オレの言うとおりにすればいいだけだからさ」
「え?でも…」
心配?そんな顔で見つめてくるリトから顔を背けると唯はつい強がりを言ってしまう
「し、仕方ないわ…それでなにをすればいいの?」
「後でいっぱい怒ってもいいから、オレの好きなようにヤらせて欲しいんだ!それだけ」
じっと見つめてくるリトになにか引っかかるモノがあるものの、唯はその場の雰囲気に呑まれてしまう
「……変なコトしないなら…いいわよ」
「それじゃあ唯、立ってそこの壁に手をついてお尻こっちに向けて」
色々と反論はあるがさっき言ったばかりなため、唯はしぶしぶリトに従う
そんなギコチナイ唯の動きにリトは顔をしかめる
「もっとお尻こっちに突き出して欲しいんだけど」
「そ、そんなコトできるわけ……⁄⁄⁄⁄」
「へ~唯って約束破るヤツだったんだ……」
リトの冷たい視線に唯の顔は凍りつく
「わ…わかったわよ!やればいいんでしょ?やれば……⁄⁄⁄⁄」
自分でも卑猥なコトだと感じたがリトへの思いが勝ってしまう
「これでいいんでしょ?これで…」
唯の後ろに回ったリトは満足げにその姿を見つめる
突き出された下腹部からは性器が丸見えで、恥ずかしさのため体まで赤くなっているその姿に、リトの興奮は高まる
リトの指がすーっと唯の背中を滑っていく
「…ゃあっ…んッ…」
くすぐったさに身をよじる体に合わせて胸もぷるぷると震える
「結城…くん、くす…ぐったい……」
「じゃあどうして欲しいんだ?」
リトの手が唯のお尻へと這わされ、やわらかい肉感を堪能していく
「ん…ゃ…ンッ、そこ…違う…」
「違うってなにが?胸の方がいいのか?」
リトはそう言いながらもお尻を揉んでいく
「どうして欲しいのかな~唯は?」
唯はリトの焦らしに我慢できないのか体をピクピクと震えさせる
愛液が割れ目から溢れだし太ももに滴り落ちていく
リトは膝を屈めると、その流れ落ちる愛液を舌で掬い取る
「ひゃッ!な、なにしてるのよっ?」
後ろを振り向き様子を確認する唯に、リトは白い太ももに口を近づけ舌を這わしていく
「…っあ、んッ…くすぐっ…ぁは」
上下左右に動く舌に唯の下半身はピクピクと反応する
「オレおまえの脚すっげー好き!」
「う…うんあり…が……とう…」
息も絶え絶えな唯はそれでも褒められたことがうれしくて、ついつい反応してしまう
(結城くん私の脚好きなんだ……)
リトの言葉に顔もほころんでくる
そんな唯の下腹部に手を伸ばすと、リトはヒダを広げ膣内を覗き見る
何度も掻き回された膣内は唯の本気汁で溢れ、肉壁はリトの挿入を待ちわびているかのようにヒクヒクと波をうっている
「え、エロすぎ……」
リトの声が聞こえたのか唯は体を強張らせる。と、同時に膣内もキュッと締まるかの様に蠢く
「……あんまり見ないで欲しいんだけど⁄⁄⁄⁄」
耳まで真っ赤に染まっている唯に我慢できなくなったリトは、立ち上がり肉棒を割れ目へと当てる
じゅぶじゅぶと音を立てて入ってくる感触に唯の口から熱い吐息が漏れる
「あッ…ん、結城くんが入って…くぅ、ぁあ…」
「おまえそんなに入れて欲しかったんだ?」
「だ、だってあなたさっきから違うコトばっかりして全然……」
ちょっと前まで散々リトに責められていた下腹部は、すでに少し動いただけでキュッと締まり、
とろりと溢れ出す白濁した愛液がリトのモノを白く染めていく
「そんなに欲しかったんだオレの?」
唯はなにも言わないがその顔を見れば十分だった。真っ赤になった頬に体は小刻みに痙攣し、リトの動きを待ちわびている
リトは口を歪めると、いっきに根元まで挿入していく
「…あんッ…も、もっとゆっ…くり…んッ」
「オレも唯が欲しいよ!欲しくて欲しくてたまらない!!」
リトはそう言いながら腰を打ち付けていく
「ん、ぁあ…やッ…くう…ん」
リトは唯の背中にキスをすると、そのまま舌を這わしていく
汗に濡れた背中は少ししょっぱくて、なにより唯の味がした
「……ッはぁ…ん、んッ…ゃあ…」
ピクンと背中をよじると艶やかな黒髪が汗と唾液に濡れる背中へとかかる
その髪の匂いを胸いっぱいに吸い込むとリトは唯の体をギュッと抱きしめた
「あんッ…結城、くん?どうしたの?」
自分を抱きしめ背中に顔をうずめるリトへ、唯は不思議そうな目をする
「なんかおまえがすげーカワイくてさ」
「…なによそれ」
顔を背ける唯がますますカワイく感じられたのか、リトは唯をさらに強く抱きしめる
(もう……)
心の中で悪態をつきながらそれでも唯は、リトに身を委ねていく
(結城くん、こんなに私のことを……)
リトの行動が思いが唯の中で溢れ出し、それが普段よりも唯に積極性を出させる
「ねぇ、動いて…結城くん……」
唯の口から熱い言葉が紡がれる
「私…もう、我慢できない…から……」
その声はすーっとリトの頭へと入り込み、理性をとろけさせる声だった
膣内が唯の欲望を表すかのようにざわめきリトを促していく
その反応に背中から体を離したリトは、唯の望む様に腰を打ち付ける
それは、焦らしや緩急の変化もなにもない欲望にまかせただけの動き
すぐに込み上げてくる射精感にもかまわずリトの動きは、止まらない
「あ…ふぅ…あぁ……ッん、ンン」
(すご…すごく激し…ッん!結城くんに私犯されてる…)
唯のお尻の肉に揉みしだくように手を押し付けながら、動きを加速させていく
前後へと乱暴に乱れさせられる唯の体
壁に付いた手からは力が抜けていき、下半身はリトにいいように責めたてられる
「ほら、しっかり手をついてろよ!姿勢くずしたらもう動くのやめるぞ?」
その言葉に体がピクンと反応し、唯の手に少しずつ力がこめられていく
けれどすぐに手は壁からずれ落ちてしまい、反射的になんとか腕をついて体を支える
「ほら、どうするんだ唯?ちゃんと体支えてないとホントにやめるからな」
「…あッく、うぅ…いゃ……嫌ぁ、やめないでお願い…」
リトの方を振り向きそうお願いする唯の目は涙で濡れていて、リトの心を昂ぶらせる
リトは口を歪めた
今、唯を支えているのは、リトに支えられている下半身と、わずかしか力が入らない壁についた腕だけになっていた
唯は残った理性をかき集めて腕に力を入れていく
それは普段は滅多に見せない唯の心の内を表しているかのようで
そんな必死な唯の姿が、リトはとてもうれしかった
「唯…」
リトのなにを感じ取ったのか、唯はわずかに見えるリトの顔を振り返る
「いい…わよ、私の中に出しても。結城くんの出したい時で…いいから」
リトの喉がゴクリと音を立てる。いつぶりだろう唯の膣内に出すのは……
「いいのか?ホントに?」
「ええ…」
「だって、この前あんなに怒ったのに?なのにホントにいいの?」
何度も聞き返してくるリトにいい加減唯の顔はムッとしてくる
「もう、何度もこんなこと言わせないでよ!!恥ずかしいんだから……。
それに…それにもし、私に赤ちゃんできても結城くんがずっと一緒にいてくれるんでしょ?////」
それは一ヶ月前に交わしたリトの約束、そして、リトの純粋でいて強い思い
唯は溢れ出る快楽の中でリトの返事を待っていた
リトは動きを止めると唯の頭を撫でる
愛しむように、自分の思いの全てを込めるように
くすぐったさで身をよじる唯の背中へとリトは顔をうずめる
「ああ、いるよ。どんな時もずっと、ずっとおまえのそばに……」
それは不器用でいて、まだまだ未熟な背伸びをしている思い
未完成のプロポーズともとれるリトの言葉
それでも、だからこそ唯はうれしかった。リトの本当の気持ちが純粋な思いが、その言葉には込められていたから
思わずくすぐったくなる体をほころんでくる顔をなんとか押さえ込み
唯は短く返事をする
「うん、私も」
「…じゃあ、おまえの中に出すからな」
そう言うとリトの腰が再び動かされていく。込み上げてくる欲望を吐き出させるために
リトは唯の体を膣内を犯していく
リトが腰を打ち付ける度に胸を揉みしだく度に唯は、くずれそうになる脚に懸命に力を入れる
そうしていないと立っていることすらできない
壁に腕をつきなんとか姿勢を支えている唯は、耳に届くリトの荒い息を感じながら、下腹部に意識を集中させる
すでにリトだけの形になっている膣内はそれでもまだまだきつくリトを締め上げる
「おまえのココすげえ…最高……」
「ゆ…結城くんのだから…結城くんだけの、だから好きにしても……」
熱い吐息と共に唯の口から淫らな言葉が出る
どんなに嫌がっても、どんなに否定しても体は心はリトを求めてやまない
リトといるとどんどん変わっていく自分
(違う……変わっていってるんじゃなくて私は…)
「唯…出る…うッ!!」
唯の思考を邪魔する様に熱いモノが体に満ちていく
「あ…くぅ…ッん」
子宮に注がれる熱い流れに膣内はざわめき唯に絶頂を与える
それでもなお膣内は痙攣を繰り返し、リトの全てを搾り取ろうと中を蠢かす
割れ目から中に収まりきれない欲望が蜜と共に溢れ、ベッドにぽたぽたと落ちていく
ガクガクと震える腰をリトに支えられながら、唯はただ全身に覆う波に体をゆだねる
二人の荒い息だけが部屋に満ちていた
リトが肉棒を引き抜くと先端から飛び出した欲望が唯のお尻を汚す
「はぁ…ぁ…熱い、んッ」
崩れる様にベッドに座り込む唯の顔にリトは愛液と精液で濡れた肉棒を差し出す
「ほら、ちゃんと掃除しろよ」
鼻につく強烈な牡の臭いに顔をしかめるも、唯は言われたとおりに口にそれを運びこむ
(こんな……ハレンチなこと私…)
けれど気持ちとは裏腹に、唯は自分の中に生まれた小さな変化に顔をほころばせる
リトの前で素直に股を開く自分、リトの行為全てに淫らな声を出し反応をする体
そしてそんな自分を求めてやまないリト
『オレだけの唯』
いつか体を交えた時に言われた言葉
リトのぬくもりと共に伝えられたそれは唯にとって宝物にも似た大切な言葉だった
不器用に竿に舌を絡める唯の髪を、リトは愛しげに撫でる
唯は伏せていた目を向けるとリトを見つめた
愛情に溢れ自分の姿しか映さないリトの目
そんなリトを、唯はただじっと見つめ返す
それは普段は奥手で純情なリトが見せる精一杯の意志表示なのかもしれない
唯は口から竿を離してもじっとリトを見つめ続ける。目を離すことができないでいた
口からは唾液が糸を引き、口元は欲望で白く汚れている唯の顔
唯は口元との精液を指で掬うと口の中へと運ぶ
いつもの生真面目な顔に今は恍惚さが交じり合い、唯を女の顔へと変えていた
「唯……」
リトは自分にぼーっと見とれている唯の腰に手を回すとぐいっと引き寄せる
下腹部はすでに大きさを取り戻していた
リトの膝の上に座った状態の唯は目をとろんとさせリトを見つめる
「またおまえの中に入れさせて欲しいんだ」
「……結城くんの好きにするんじゃなかったの?」
くすっと笑う唯にリトはバツが悪そうに顔を赤らめると、唯の腰を浮かして自分のモノを割れ目へと当てる
ずぶずぶと肉がヒダを押し広げて中へと入っていく感触
今日、何度目かになるその心地よさにリトの下腹部はビクビクと波打つ
何度入れても、何回出しても飽きることのない唯の体
自然とリトの息も熱くなる
「…ッん…あ、あァ…ンくぅ」
「やっぱ今日のおまえいつもと違って積極的だな」
いつもなら、挿入する前どころか体を触る度にいろいろと文句を言う唯の変化に、リトも不思議そうな顔をする
唯はそんなリトに少し顔を曇らせると、恐る恐る尋ねる
「…こんな私……嫌?」
リトは目を丸くさせるとぷっと吹き出す
「ちょ、ちょっとどうして笑うのよ?私は真剣に…」
「悪い、ゴメンゴメン!ただ……やっぱ唯は唯だなぁって思ってさ」
唯はまだ釈然としないのか、それでもリトの首に腕を回す。その目はいつにもまして真剣だった
「……結城くん、私が変ってもずっと一緒にいてくれる?」
「なに言ってんだよおまえ?」
リトは唯の質問の糸がわからず首を傾げる
「私だけの結城くん」
「え?」
ぼそりと呟いた声はリトの耳には届かない。唯はその言葉を胸にしまい込むとリトにキスをする
「私を離さないでね。絶対…絶対」
いつもとは違う熱のこもった唯の眼差し
「……そんなの当たり前だろ!おまえのいない日常なんてもう考えられねェよ」
溜め息を吐きながらも話すリトの目は真剣そのものだ
そんなリトの胸に顔をうずめながら唯は小さな声で精一杯応える
「…うん、私も!結城くんがいないなんてもう耐えられないから⁄⁄⁄⁄」
素直でいて真っ直ぐな唯の気持ちにリトの心臓がドキンと高鳴る
「唯……おまえ…」
自分が変わっていくことが、変わることでリトの気持ちが揺れ動くのではいかという、不安があった
そして自分の『心の奥にある本当の気持ち』を知った時、いつかリトにとってそれが重く迷惑になるのではないかという不安
そんな自分の気持ちをリトに知られたくないのか、唯は黙って胸の中で顔をうずめていた
リトは小さくなっている唯の肩を掴むと顔を上げさせる
「バカだなおまえは……そんなくだらねー心配するなよ!オレがおまえを嫌いになるわけないだろ!!」
唯はその言葉になにも言わずにただ首を縦にふる
「おまえは相変わらずいろいろと考えすぎるヤツだなァ」
少しあきれ気味のリトにも唯はなにも応えられずにいた
リトとのありとあらゆる初めての経験が、唯に様々な壁を作っていく
それに悩み苦しむ日々
本当のことが言えない…自分の本当の気持ちも伝えることもできない
きっと結城くんにもいろんな愚痴をこぼさせてる……
それでも結城くんはそんな私のことを好きだと、大切だと言ってくれる
結城くんからもらったモノはたくさんあって、そのどれもが大切で大事なモノ…
唯はそんなリトのやさしさや気持ちになんとか応えたいと思っていた
思ってはいるのだがどうしていいのか、なにをしてあげればいいのかわからないでいた
不器用でいて真っ直ぐな気持ち故の唯の悩み
そんな自分に内心あきれつつも唯は、今自分にできることを一生懸命しようと思った
俯かせていた顔を上げるとリトに懇願する
自分の気持ち、今リトにしてもらいたいことを伝えるために
「…結城くん…きて……」
唯はもう待ちきれないのかリトに顔を近づけさせていく
「オレも唯がもっと欲しい」
二人は貪るように互いの唇に吸い付く
ぐちゅぐちゅといやらしい音が鳴るのも構わずに唯はリトに合わせて腰を動かしていく
そこには風紀委員でも真面目な優等生でもない、古手川唯という一人の女の子がいるだけだった
肌を密着させ汗や唾液で汚れることにも遠慮せず舌を指を絡ませ合う
「んッ、ちゅ…ぅはあ…ちゅぱ、んッく」
互いの唇に吸い付き、舌で口内を蹂躙し唾液を交換しあう
「…ふぁ…むぅ、ンン…うぅ」
背中に回した手に力を込め肌が赤くなるほどに互いを抱き寄せる
(結城くん…結城くん、私だけの結城くん……)
心に宿る強い気持ちを体で表すかのように唯は乱れていく
自分の体でリトに触られていない部分も見られていないところももうないだろう
体中隅々まで舌を這わされ、吸い付かれ愛撫される。今まで嫌悪の対象でしかなかった唾液の交換も、今では心地いいぐらいだ
唯の中でどんどんリトへの思いが強くなっていく
愛おしくて好きでたまらない気持ち
糸を引かせながら口を離した後も唯はじっとリトの顔を見つめ続ける
「…ッん、はァ…ん…イイ!すごく…気持ちよくて……結城くんが奥まで、きて…ン」
腰が上下に動く度、子宮口に当たるリトのモノはさらに中へ中へと膣内を押し広げる
「あ…ン…んんッ、ァハ…あァ」
お互い抱き寄せていた体を離すと、額から流れ落ちる汗が二人の間に落ちていく
「結城…くん、もっと欲しい…もっと…」
リトは唯のお尻を掴むと叩きつけるように腰を動かす
小柄な唯の体はそれに合わせてリトの膝の上で跳ねる
「…んッく…ぅ、あァすご…イッ」
上下に動く体に合わせ、唯の乳首がリトの胸板を擦っていく
「唯、唯、唯……」
自分の名を呼ぶ声が、熱い息と共に耳元に運ばれてくる
心地よくて何度も呼んでもらいたくなる呟きが唯の体をざわつかせる
「結城くん…私、もう…ダメ…」
「オレも……限界」
リトはすぐにでも吐き出しそうになる射精感を歯をくいしばって押さえ込む
「うん…一緒にきて…結城くんと一緒が…いいの…」
リトは唯の首に腕を回し体を抱き寄せる
「じゃあ出すな…おまえの中にいっぱい」
「いいわよ!出して…結城くんのいっぱい出して!!結城くんので私をいっぱいにして」
リトの突き上げが激しさを増していき、膣内を責めたてる
「あ…くぅ…はあ…ん、ンン…ッんア…ダメぇ私もうっ!」
キューっと締め付けが強くなる唯の中で、リトはこの日二度目になる欲望を吐き出した
荒い息を吐きながらベッドに横たわるリトを尻目に、唯は身なりを整えていく
さっきまでの気持ちはどこへ行ったのか
いつまでもハレンチな格好はできないと、唯は気持ちを切り替え下着を着けていく
ベッドの上ではまだ余韻にひたっているのかリトは寝転がったままだ
「まったくあなたは……どうしてすぐにだらしなくなっちゃうの?」
唯の少しきつめの言葉にもリトは知らん振りを決めこむ
「もうっ!結城くん少しは話を……」
ムッとした顔でリトに詰め寄ろうとした唯の目に、四時を告げる時計が飛び込んでくる
「今、四時なんだ……」
朝からずっとリトとハレンチなことに夢中になっていた唯は時間の存在を忘れていた
そして、そんな自分に顔を赤くさせる
(と、とにかくまだ四時ということは……)
まずシャワーを浴びて、服に着替え少し休憩しても五時前には……
頭の中でこれからの計画を考え終えた唯はリトに向き直る。緊張が体を駆け巡るが、ちゃんと伝えようと思った。
自分の気持ちを素直に
キュッと握り締めた手を胸に当てて深呼吸
「ね、ねえ結城くん、も…もしよかったらこれから私と外に出かけない?
ほら、私達って今までデート……みたいなことしたことないじゃない?だから…」
「……」
無反応なリトに怪訝な顔をすると唯はベッドに近づく
「だ、だって私達ずっとこんな感じだし、そ…そうよそれにこんなこと高校生らしい付き合い方じゃないと思うわ!
だ、だからと言って別に結城くんとハレンチなことしたくないって言ってるわけじゃなくて……。
えっと私ただその…結城くんともっと色んなところに行ったり、色んなコトしてみたいなァって⁄⁄⁄」
「……」
リトはまた無反応だ
「結城…くん?私なにおかしなこと言った?結城くん?……ちょっと聞いてるのっ?」
自分なりに精一杯の気持ちを言ったのに、それをことごとく無視するリトに唯は口調をきつくする
「あなたいい加減になんとか言ったらどう…」
リトに詰め寄ろうとした唯の動きは止まる
ベッドの上ではリトが心地いい寝息を立てていた。その気持ちよさそうな顔を見ている内に唯の体から力が抜けていく
「……もぅ…」
唯は溜め息を吐きながらもリトに布団をかぶせてあげた
結局いつもの様に夜まで家にいた唯は、美柑お手製の夕食を食べた後、リトに送られながら家路についていた
「なあ、なに怒ってんだよ?」
「……別に」
隣を歩く唯の冷たい一言にリトは顔をしかめる
(なんだ?オレなんかやったのか?)
リトが悩んでいたその時、二人の横を同い年ぐらいのカップルがすれ違っていく
その二人をじっと見つめる唯にピンときたのか、リトは唯の手をギュッと握り締める
「ほら、オレ達だって付き合ってるんだし負けてないと思うけどな」
リトと手を繋ぐのはうれしいし、こうやって並んで歩くのもうれしい
だけど唯はリトとは別のことを考えていた
通り過ぎた男の子の手にはどこかで買い物をしたのだろう、デパートの紙袋やケーキの入った箱が握られていた
きっと二人で服や小物を見たり、何を食べるのかウインドの前でケーキを選んだりしたのだろう
「いいなァ……うらやましい…」
素直な気持ちが口からこぼれる
そんなぼーっとしている唯を立ち止まらせると、リトは家に着いたことを教える
「おまえホントにどうしたんだよ?大丈夫か?」
「う…うん!大丈夫だから!!今日はありがとう……じゃあまたね」
名残惜しげに手を離すリトに別れを告げると唯は玄関のドアを開けた
リトと別れた唯は自分の部屋に戻ると、ぼんやりと窓の外を眺めていた
「はぁ~今日も一日結城くんとハレンチなことばかり……」
自分からリトを求め、リトに身を任せているのだから文句はないのだが
それでも唯の口から溜息がこぼれる
窓の外を歩く同じ年ほどのカップルに唯の羨望の視線がそそがれる
仲良く腕を組んでいる二人。自分にはそんなマネはできないが手ぐらいは繋いで街を歩いてみたい
リトとデートらしいデートなどしたことのない唯にとって、待ち行くカップルはみな憧れの対象になる
唯はまた深い溜息を吐くと、窓を閉めお風呂に入ろうと着替えの支度をする
その時、ふとカレンダーに目が留まった唯は何気なく日にちを目で追っていった
来週の日曜日
(そういえばこの日は確か……)
そのコトを確認すると唯は明日どうやってリトにその話を持ちかけようかと考え出した
そして一週間後の日曜日
今日は地元の神社で行われる夏祭りの日
花火大会もあるということで、今、駅の中は人で溢れかえっている
そんな中、唯は駅構内にある鏡の前で自分の服装のチェックをしていた
自分のセンスに自信があるわけじゃない。服のコーディネイトだって雑誌を見ながらだ
それでも今日という特別な日のために、唯は自分なりに一生懸命がんばってみた
白い生地に、夏らしく涼しげな青の花や赤い花をあしらった浴衣
髪を後ろでアップにし、いつもとは少し違う印象を出してみたりもしてみた
唯は鏡の前で深呼吸をする
頭に浮かぶのはリトの顔
「結城くん…あなた今日のことどう思ってるの……?」
『へ、祭り?いいぜ!特に用事もないし』
あの日、なんとかがんばってリトへデートの誘いを申し込んだ唯は、リトのあまりの簡単な返事にきょとんとなった
もっと驚いたり、焦ってくれたり、喜んでくれたりしてくれると思っていただけに、唯の中で複雑な気持ちが生まれていた
これまでデートらしいデートなどしてこなかった二人にとっては、これが初デートだというのに、リトの気軽さが少し唯の心に影を落とす
「結城くん……」
ぽつりと呟いた言葉に唯の胸は締め付けられる
最近リトのことばかり考えている自分。リトを中心に考えている自分
頭の中にずっと居続ける最愛の相手
好きで好きで、どうしよもなく好きでたまらなくなっている
それは唯自身でもわかるほどに強く、重い感情。決して表には出すことのない自分だけの思い
それは、言葉では中々言えない素直な気持ち。ひょっとしたらこの先も口にだすことはないのかもしれない
この日への思いも、その思いの深さも
それでも唯は大丈夫だと信じていた
口に出さなくても、気持ちを確かめ合わなくてもきっと大丈夫だと――――
そこには確証もないし、絶対なモノもない
あるのは信じているという気持ちだけ
口に出さなくても伝わっている、確かめなくてもわかるお互いの気持ち
だから、だからきっと今日だって……
それはエゴかもしれない、自分勝手な思いかもしれない
それでも……それでも――――
「結城となら私は…」
小さなか細い声がこぼれた
唯は鏡の中の自分の姿をじっと見つめる
鏡に映る自分の姿は、普段の自分とは掛け離れていた
そんな自分の弱さに唯はキュッと手を握り締める
「そうよ…そうよ!きっと…きっと結城くんだって今日のこと大切に思ってくれているわ」
鏡に向かって言い聞かせるようにそう呟く
心の中はまだざわめいたまま
それでも最後にまた髪のチェックを済ますと唯は、リトとの待ち合わせ場所に向かう
リトの顔を見るために、その手を繋ぎ合わせるために
その胸に、一つの悩みを残して
夕方を少しまわった駅前広場、時間にうるさい唯のためとはいえ待ち合わせ時間より
30分も早く来ていたリトは、どこか落ちつかなげに人の流れを目で追っていた
今日は自分にとって、二人にとって特別な日
こうして待っている間もドキドキと心臓の音は早くなっていく
リトがそうやって一人落ちつかなげにそわそわしていると後ろから見知った声がかかる
「結城くん?」
振り向くとそこには浴衣姿の春菜が立っている
「さ、西連寺!?」
「結城くんもこれからお祭り?」
「ああ…」
(そういやララのヤツが春菜ちゃんとどうこう言ってたな……)
今日は夏祭りということもあり駅前広場はいつも以上の人で溢れていた
そして、そんな中でも一際目立つ雰囲気を醸し出している目の前のクラスメイト
黒髪と薄紫の生地に花模様の浴衣が、絶妙のバランス具合となって、春菜からいつもはあまりない大人びた色気を出させていた
中学の頃ずっと思いを寄せていた相手だけにリトの心臓はドキンと高鳴る
(春菜ちゃん今日はなんだかすげーキレイだなァ……)
「結城くんはここでなにしてるの?誰かと待ち合わせ?」
「え!?ああ…うん、そうなんだ。友達と待ち合わせ」
別に付き合っていることは秘密でもなんでもないのだが、つい唯との関係を友達だと言ってしまうリト
「そっか…私もララさん達と待ち合わせ。同じだね」
にっこりと笑顔を向けてくる春菜にリトの顔も赤くなる
(やっぱ春菜ちゃんカワイイ)
リトは思い切って心に浮かんだコトを口に出す
「あ、あのさ西連寺…きょ、今日はいつもよりなんつーかその…浴衣すげえ似合ってるよ」
思ったことの半分も口に出せないリトだったが、春菜はそれがうれしかったのか耳まで真っ赤になった顔でもごもごと口を動かす
「あ、ありがとう…⁄⁄⁄⁄」
「う、うん⁄⁄⁄⁄」
「……」
「……」
(やべ!気まずい!!なんか…なんか言わねーと!!)
微妙な雰囲気に二人は飲み込まれていく
「あ、あの結城くん!」
春菜は顔を俯かせながら少し上ずった声を出す。その顔はまだ赤いままだ
「な、なに?」
「も、もしよかったら結城くんも……わた、私と……私達といっしょにお祭りに……」
言いたいことを最後まで言うことなく、その時、春菜の巾着からケータイの着信音が鳴る
「ご、ゴメンね…ちょっと待ってて」
春菜がケータイを取り出しなにやら話し込んでいる間、リトは時計を見る
時刻は六時五分前、中々姿を見せない唯にリトは少し不安になる
(あいつなにやってんだ?いつもならとっくに来ててもおかしくないのに…)
リトが一人考え込んでいると話し終えた春菜がリトに向き直る
「ゴメンね結城くん、ララさんから電話あって私そろそろ行かないと…」
「ああいいよ、オレこそ引き止めてゴメンな!」
春菜はリトの顔を見るともごもごと口を動かす。それはさっき言いかけたコトを、言いたかったコトを言おうとしているみたいで
その様子にリトは不思議そうな目を向ける
「西連寺?」
「……ううん、なんでもない」
「そっか…じゃあ気をつけてな」
「うん、結城くんも」
去り際、春菜はもう一度リトの顔を見つめると、なにも言わずに歩き出した
「なんだったんだ春菜ちゃん?オレになんか用事だったのかな……」
「ずいぶん仲が良いみたいね西連寺さんと」
後ろから聞こえたその声にリトの背中はビクンとなる
「唯!?」
唯は遠くに見える春菜の姿に目を細めると、リトに向き直る
「……結構前に着いていたんだけど、なんだかお邪魔みたいだったから黙ってたの」
ふいっと顔を背ける唯にリトは溜め息を吐く
「おまえなに言って……まあ、ちゃんと来たからよかったけど。それじゃあ行こっか唯」
歩き出したリトの背中を見ながら唯は不満そうな顔になる
(なによ!結城くんったらあんなにデレデレしちゃって……)
リトの隣に並びしばらく歩いても、その気持ちは治まるどころか大きくなっていく
(しかも結城くん私にはなにも言ってくれないし……)
この日のために初めて買った浴衣
袖を通す時、リトの顔が浮かんではどんなコトを言われるか期待に胸を躍らした
店で買う時もリトの好きそうな色合いを思い浮かべ悩みながら選んだ
下駄も巾着もみんなこの日のために、リトのために―――――
『あ、あのさ西連寺…きょ、今日はいつもよりなんつーかその…浴衣すげえ似合ってるよ』
そう言った時のリトの顔が、声が頭の中で甦る
手を繋ごうと伸ばしたリトの手を無視すると、唯は黙って隣を歩く
その目は少し悲しげに揺らめいていた
祭りのある神社は予想以上の人でごった返していた
おいしそうな匂いがする露店の数々。子供たちの楽しそうな声。それがリトの心を躍らせる
そして、それは隣にいる唯も一緒なようで、リトと同じように目を輝かせていた
「へ~おまえもやっぱ、こういうとこ好きなんだな。俺も好きなんだ、祭りって!」
楽しそうな顔で笑うリト
「べ、別に私はそういうんじゃ……。そ、それに勘違いしないでね!私が今日ここに来たのはお祭り目当てじゃなく…」
「風紀活動の一環なんだろ?彩西高の風紀を乱すヤツを取り締まるとかそんな感じの」
「え、ええ…。あなたにしたらよくわかってるじゃない。そうよ!私達が今日ここに来たのは、
あなたの様な生徒が問題を起こさないように見張りに来ただけなんだから」
妙に声を強めて力説する唯
「だ、だから変な勘違いしないで」
「ああ、んなコト今さら言われなくっても、ちゃんとわかってるって」
リトはそう言うと唯に手を差し伸べる
「けど、風紀活動も大事だけど、今日はせっかく祭りに来てるんだから楽しまないと損だぜ?それに、オレ達にとってこの祭りは特別なものだろ?」
唯の胸がドキンと高鳴る
なにが特別なのか、喉まで出かけたその言葉をムリヤリ呑み込むと、照れ隠しの様にリトから顔を背けてしまう
「唯?」
「きょ…今日はそんなんじゃないんだから、結城くんも真面目にしてっ////」